朝へ 傷へ/木立 悟
 





水にとける傷
とくとくと
しるしのように
書き換わる


何ものもなく何ものもなく
気付くと在った手のなかの音
微塵につづく
こがねの拍手


鳴りひびくのは
火の肺の息
砕いても砕いても 除けぬかたち
幸せにはひとつ 足りないかたち


陽と水のやりとり
わたし わたし 
わたされるもの
こぼれるものらのゆくところ


割れた指に重なる指
見えない球をとらえて消える
数多のゆらぎ 露わなる天
夜の鼓を はじく夜の手


眼からこぼれ落ちそうな眼が
宙を二十三文字に切り
細い細い裏通りには
色が色に遠去かりゆく
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