影と記憶/佐倉 潮
 
一日の仕事を終えて
暗い家路をたどる
もう一息という坂道で
電信柱の影から人が
すうっと抜け出てきた
ような気がした

だけどそれは唯の
光の加減だった

一瞬あなただと思った

いつだったかあなたは
そんな風に僕の帰りを
待ってくれていて
僕がびっくりしたのも
少し楽しそうだった

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