感謝を/salco
いつからか
「小野 一縷」という名を目にすると迂回して
その日の最後か翌日に読むようになった
覚悟を要したからだ
突きつけて来るのが本当の別世界だったから、
背筋を伸ばして対座せねばならなかった
しばしばそれは陶酔というより
瀕死の緊迫で私を脅かし
放埒なイメージと色彩の重力に満ちた言葉の
一つ一つの放射、一節一節の握力が
漫然と聞き流すことを許さず
まなじりを決して読み込む労力を要求した
水面の直下にきらめく圧倒的な幻惑や
地獄の宝石を間近に凝視するかのような嬉しさの半面
だから厭わしさを覚えた
余りにもかけ離れた場所を生きた、
生きざるを得なかった彼の
孤独の
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