不死身/砂木
 
雪づたいに屋根に登れる
大雪の林檎畑は真っ白け
ペンペンと枝の先が雪の上に見えるのみ
どこに木があるのかもよくわからない

横に伸びた枝が雪の重みで裂けて
林檎の木が全滅してしまう
父は 降り続ける雪の中
雪を払ったり木を掘り出したり
連日のように木を救いに行ってはいるが
降り止まない雪 溶け出したら
なお重くなる雪という奴に立ち向かうのは
七十二歳という歳でもあるし
無理して体をこわしたり
あまり苦にして病気にならないように
林檎の木はどうなったと
義理チョコを持って行きつつ聞いてみた

俺は不死身だ と父が言った
春になったらだめになった木の片付け用に

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