わたしたちの安心と釈放/ねことら
幸福には、適度な睡眠と適度な暴力が必要だ。
きみは、まっすぐにわたしをみつめながらそんなことをいう。
そうして、わたしをやさしく殴る。
お腹、頬、背中、顔、やめてやめてと叫びながら、
わたしは嵐のあとに優しくきみに抱かれるのを待っている、
やさしくきみの強張りをわたしの湿潤に挿しいれてくれるのを待っている。
オレンジゼリーのうみでおぼれるような甘い痛み。
どうして、きみは殴りながらないてるの?
平板な夜が広がっていた。
デジタルフォトフレームに切り取られた空白。
なきつかれたわたしたちは、ひざをかかえ、ベッドの端で目をとじる。
いちばんたいせつなものが、いちばんこわいかおをしている。
そのことを、わたしたちはしっている。
目はそむけない。
戻る 編 削 Point(3)