或る男女の情景/只野亜峰
 
み込めてきたじゃない。不倫関係がもたらす快楽は日常の苦悩とは乖離した場所にあるから美しいの。
 それが精神的な欲求であれ、肉体的な欲求であれ、相手に望むものを選んで一方的に奪い取る事ができる。
 それは少年少女が夢見る初恋のような純粋な愛の形よ。
 だからこそ彼らはそれに溺れるし、そこから抜け出すことができないの」

「醜い部分を押し付ける事ができるパートナーあってこその関係というわけか。
 なるほど皆に毛嫌いされるわけだよ。誰だって自分は当て馬のように扱われたくはないからね」

「中には不倫関係に甘んじている理由を子供や社会的なしがらみのせいにしている人達もいるけれど詭弁だわ。
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