スカイプ連詩「閉鎖病棟」森川茂/フライハイ/within
 

軽くなった気分と同じだけ生きる気力も薄れ
或いはわたしはここでずっと暮らすのかもしれない
喫煙所で会った女性は14年間ここにいると言った
父親の葬儀にも出させてもらえなかったと

なにもかもわすれていって
季節もなくなって
残るのは一日の移ろいだけ
夜9時になれば灯を消され
また今日という日を忘れる

狂っているのがセカイなのか自分なのか
誰がそれを決められるのか
心の中で何度も問うてみるも答えは出ず
強い薬に無理矢理眠らされ
次の朝がやってくる

薬のせいではなく
湧き上がる欲求にまかせて
飛んだだけなのに
鉄の殻の卵の中で
孵化することさえできない

いっそひと思いに
この存在すら無くしてしまえば
否、はじめから無かったことにすれば
ここに居続ける事が出来たなら
それも可能かもしれない

いつかはちりぢりになるのだから
うまれてきたあきらめといっしょに
可能性を追いかける
それが原点から
全くうごいてないことになっても

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