miscellaneous note/ehanov
或る時に
コップにコーヒーを注いで
赤茶けた土の上に
冷静に横たわる猫を見ながら
遠い冬の日を眺めた
菜の花の
暖かく黄色いさまが白黒の人たちを
この世界へ浮きだたせる
土の上に寝転びながら
紫煙を燻らせ
まだ冷たい風を浴びるそれらの人の
誰かの声
それはあまりにも凄惨な
爆裂音ではなかったか
朝焼けの神妙に佇むさまを
赤い風が無礼に覆った瞬間を
まどろんで眺めていたわたしの横に
さきほど目を覚ました猫
柔らかく上げた左前足を舐めながら
幽玄と立ち現れ
白黒の人たちを
ひとつの郷愁に貶めた
それは或る朝の
まだ霜の絶えない一日のこと
コップに注がれたコーヒーは
その黒さをゆったりと揺すって
ただ 笑っているばかりでした
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