霧ヶ丘/黒乃 桜
背中に張り付く魔物が
肢体を麻痺させて 気怠く愛してく
顎に伝う流せなかった涙
痺れたまま息苦しさを主張して
取り戻せなくなる方か
後悔のこの字はこういう時
それでも衰えない思考回路
篩にかけられたみたいだ
揺れる視界の中
見つけ出そうと必死だ
いつまでも長引いた痛み
ステータスにも表示されないのに
幾らでも教えてやろうと口を開けたけど
喉は言葉さえも通さなくて
針が冷たくした液体で
生かされるんだ 今はまだ
ぼんやり浮かんだ照明じゃ
君も見つけられないのに
霧がかかって 彼女
魔物退治に出掛ける
雨に打たれて 彼女
戻ってこないの?
空中に浮いた電球は 空調と相性が悪くって
またふらふらと視界を惑わせる
島に刺さった体温計
マイナス地点を表示する
目を開けたままみた夢では
魔物は酷く悲しい目だった
丘に立って 彼女 は
血みどろの剣を掲げている
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