顛末のひと/恋月 ぴの
 
出かけようとして出かけられなかった朝に
ひとりの女性の顛末を知る

喩えようのない過去の行状
足跡の是非はともかくとして
不治の病に長らく臥していたとのこと

病棟の小窓に映す時代の移ろいを
果たして彼女は知り得ることができたのだろうか

ひとひとりの居場所

それを手にいれるのは容易いようで容易くはない

水面で弾ける小石程にも波紋は拡がらず
立ち枯れた葦原を渡る北風の冷たさが身に染みるばかりで


  *


出かけようとして出かけられなかった朝に
ひとりの女性の顛末を知る

そんな日は風邪気味なのを良いことに
うつらうつらと寝返りを打ちながら
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