蟻塚(習作十句)/古月
 
私だけ黒く塗り潰されている

一年に一度必ず首を吊る

残された片靴を取りに夏が来る

ただいまと片靴だけが帰りけり

敗残兵傷痍軍人蔵の中

夜中だけ奥の座敷は差し上げる

ちょいともし落としましたよ首の人

蟻塚が無政府主義者を炙り出す

焼け野原子供ひとりが得意顔

食肉加工工場のはずがない
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