something wrong_01/ehanov
プラットホームのベンチで私は友人と会話をしていたのだと思う
ひとりは男で、ひとりは女だった。彼等は20代後半で、私は彼等と映画の話をしていた。
それはひとりの男が電車内の椅子に座り頭を両手で抱えながら、昔観た映画のタイトルを思い出せなく苦悶している場面のある映画の話だった。
男は思い出せない映画のタイトルを思い出そうとしきりに汗を拭ったり瞬きをしていた。
しまいには席を立ち上がり、電車内の人やら物にぶつかりながら、うずくまり苦しそうに叫んだ。
「その映画が思い出せないんだよね。」と私は言った。
「昔、藤原さんにその映画のことについて尋ねたことがあるんだ。彼は、それはタルコフスキーじ
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