悲しみの結婚式/一 二
なってしまったのだから
凍った滴が零れ落ちる
私の両頬を伝わって
なんということだ
知らぬ間に私は泣いていた
式場の専属の演奏家が
新郎新婦の生い立ちの記録に合わせ
大好きだった人の
大好きな曲を奏でている
誰一人として聴く者がおらず
誰一人として彼を見る者はいない
そして薄暗い式場の
照明に照らされた埃だけが
彼の周りを彷徨いている
それらすべてのことに
興味を示さずに
彼はただひたすらに
いつまでも同じ曲を鳴らし続けている
なんと変わった演奏家か
彼の隣に行こうか
彼は私の悲しみに合わせて
ピアノを弾いてくれるだろうか
そんなこと考えるだけ無駄だ
私を除いた式場にいる人は
幸せな二人を祝うことに夢中になりすぎて
悲しみにくれている人がいるなどと
思い付くはずが無いのだから
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