或る日/いわぼっけ
或る日
食い残しのおおきな鰯の頭
かざすほほ骨のくぼみの半透明
陰影の向こう
梅雨空は陰鬱なしずくを飽かずに垂るる
不満なるかな
不満なるかな
或る日
薩摩の黒豚逐電すと
心ならずも街へ出(い)づと
富裕市民の好奇の視線に
射(い)殺さるるは思はずのほか
不満なるかな
不満なるかな
或る日
久米の焼酎酌み交わし
狗肉の仏性ありやなしやと
そぉーもぉぉーさぁぁーん
祖師西来の意は
結跏趺坐
これいかなるがゆえか さぁ
さぁ さぁ
とんだところでおだてられ
痛いところに手が届く
あぁむべなるか むべなるか
指に付いた鰯の脂
後生大事とねぶりつつ
今日のひと日は大過なし
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