君は引鉄を引きたい/ホロウ・シカエルボク
 
焦燥が精神異常者の持つ包丁に集約されて
もしかしたら誰かの肉体に致命的なまでに突き刺さる
だって夜は流れてゆく時に昨日の温度を連れてゆくから


君は出来るだけ早く眠ろうと試みている
ちょっと神経質過ぎて見えるくらい何度も
携帯電話のアラームの設定を見直している
そして眠りについたらついたで
何度もそれを中断して小便に行く
深夜のトイレに腰を下ろすと
自分自身までが渦になって流れ落ちて行くような気がする
君はチャップリンのように下水管を見事なフォームで滑り降りて
どこかのマンホールから気まぐれに顔を出す
そして
トンプソンM1短機関銃を手にして
正面からやってくるヘッドライトを片っ端から撃ち抜いてゆくのだ


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