かさねるひと/恋月 ぴの
 
愛さえあればなんてね
でもそれってお金で買えそうな気もするよ

何もしないからと言いながら
私の背中に変なのを押し当ててくる

そんな安っぽいんじゃなくてさ

至高の愛
とか
無償の愛って呼ばれるやつ

見えないしさわったりできないんだけど
きっと、あったかでやすらぎとか与えてくれるはず

やたらコンビニの無機質なまぶしさが恋しくて
だめだと言っても避妊してくれなかった

すがれるものが欲しかったのに

そんな思い出したくもない昔話を繰り返すよか
自らの意思で求めてみたい

降りしきる雪にかさねる血の色は赤く

春は確かに訪れてはくれるけど
辛うじてこの生をつなぎとめてくれるものへ

感謝!と手のひらを合わせ

たぶん誰かしら悲しんでくれるだろうからと
言いかけた言葉のひとつを飲み込んだ






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