惑乱/蒲生万寿
 
花散る郷に住む君は
夢見る頃も葬り去りて
ただただ路傍の石の如く
硬くなり逝く

木枯らし吹き曝す郷に住む君は
昔日の彼方に迷い込み
失くしたものを
いざり漁る

真冬の郷に住む君は
春を待ち侘び待ち侘び
未だ根雪の下深く閉ざされ
来るはずの温もりを信じ
その日々を暗がりの中で
過ごすばかり

今生に居合わせた我等
淡き儚き一生に
どれだけのものを求めるか
逃れることなく安住する嘘臭さよ

盲(めしい)ほども見えぬ世界に
生死(いきしに)を決め付けて
澱み沈み落ちるのか

郷の季節は移り行く
美しき余韻を
無碍に残して
慈悲の姿を素直にとれぬ
浅ましき我等を残して


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