懐かしい夏/
たもつ
鉄条網を飲み込んだまま
息絶えたヘビ
懐かしいものはもう
手の甲に残る夏だけで構わない
「なつかしいなつ」
を逆さに読んでも
「なつかしいなつ」
になる
そんなはずもないのに
しばらく暗唱していると
大切な菓子を地面に落とし
泣いている子の
姿勢が目に入る
その瞬間に視界を遮る
虫の羽音に良く似た
わたしの薄い瞼
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