何もせず僕は今日に生きる/吉岡孝次
 
何もせず僕は今日に生きる
黒い机に載ったベージュのコンピューターや
襟の擦り切れかかったワイシャツに拘泥することなく
「今日」をべた塗りした今日に生きる
かつて愛した誰かの事や
「愛したと思った誰か」の事をノートに書きつけ
とりあえず、と言える今日に生きる
幾つかの詩的テクニックは概念であり、
キャリアこそが未熟の始まりなんだ、と全身で感知する
眠い目を洗う寒さに対し
断固として
掛け声を浴びせる今日に生きる
(或いはそう信じ、今日に生きるふりをする)
船舶への愛をひた隠しに隠し
メトロノームが何の役に立つのかといきりたって見せながら
恋人との冷え切った今日に生きる
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