着床痛/yuko
 
とても遠い丘で
横たわったわたしは
したばらに針を刺し
水を抜いていきます
草原の羊たちの
やわらかい角は
生まれたての
うつくしいままでしょう
まだ生まれていないあなたのために
月かげさやく

目をとじ
耳をすませると
羊飼いの笛が
辺りを
振るわせるのがわかります
そして星ぼしが
ささやく宙のしたで
生んだはしから忘れてしまう
ことばの
えいえんを抜き差しする
指先にかびが生えて

幼子は
いつだってかんたんに負けてしまうことを
そしてわたしたち、
ほとんどがみずで
それがなければ生きてはいけないのだと
知っていました
から
だれか
[次のページ]
戻る   Point(4)