ドクターストップ/三条麗菜
 
歴史を変える力などない
わたしたちは
ただ愛し合うしかないのです

隣で眠るあなたが
普通ではないうなされ方をしたので
わたしは思わず手を取り
脈をみました

診療の時間は終わりです
あなたはもう
身がまえなくていいのです
わたしは耳元でそう
ささやき続け
あなたの手を胸に抱きました

体を回復させる者の
言うことならばきっと
あなたの奥深くに蠢き
爪を研ぎ続けるあの獣も
聞いてくれることでしょう

目を閉じれば
しなやかでばねのような
あの脚が見えるのです
あなたの中の荒野を
駆けていた獣は
雲の陰からそっと見下ろす
わたしの目にも
気づ
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