少年は、そのベッドに他人が寝ているような気がした/真島正人
 
れでも少年は
先ほど見た空白が
そこに人がいた
証拠であるような気がして
ならなかった

空白は
そこにいた誰かが
いなくなることで
初めて生まれた
空白で、
言葉を持たないが
何もよりも雄弁に
語りつくす
存在であるように
思われた

空白が
体のどこかを
持ち出してしまわないよう
少年は
こぶしをぎゅっとつくって
眠った

眠りの中で
空白は
空白という形を
していなかった

空白という形をしていなかった
それは
うなり声を
あげていたような気がした

やがて朝が来て
目覚めると
カーテン越しに
差してくる
日の光が
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