明け方のクオリア/高梁サトル
{引用=
真夜中の森でひとり
花を散らす戸惑いのない指
(中心にある雌しべ)(囲むようにある雄しべ)
(覆う花弁)(支える萼)(茎)(光合成する葉)
すべてをばらばらに並べて
花のすべてをわかった気になる
科学者や物理学者たちが
無邪気に心躍らせた還元という森で
群れになって眠る獣を横目に
もの言わぬやさしい花を
手折っては散らしながら
ときどき出会う人の表情を見て
挨拶がてらに神経の数式の話をする
理解とは
不安から逃避する
もっとも賢明で消極的な方法であるということを
別の意識の記号で表現することが出来たなら
所々欠落した信号も
察し合い距離を保ち
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