泡の花/高梁サトル
 

両の手で耳を塞いで
押し寄せる血潮の波の
遥か遠くの音を聴いている

真夜中に

わたしはわたしの体が
排除しようとするものを
いつまできつく
抱き締めているのだろう
記憶の中の小さな欠片に
脆弱な神経すべてを
委ねているようで
心細くても

何度繰り返して
すり減って
純粋なものでなくなっても
それでも
諦めきれない

あの日成せなかった
何かが産み出せるなら

きっと

なみだは花
ひとつ
ふたつ
かなしみは
こぼれて

ひらいては消える
泡のように

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