愚かな農園/木屋 亞万
も殺さず
食べられそうな野菜だけを摘み取ってしまう
葉が病もうが枯れてこようが助けることはしない
雨が続いても日照りがひどくても台風が来ても
誰も助けてくれない農園
無論わたしも助けられない
鳥が心配そうに近づいて
イチジクの実をつついて逃げても
困るのは私ではない
庭が家よりも落ち着く場所になって
植物の蒸散する水蒸気の粒が乾いた肌の毛穴に触れて
さらさらとした良い匂いがする
そこに実る野菜も果実も私が食べるために植え始めたのだが
別に私が食べられそうに無かったら
放っておくだけで誰かが食べてくれたり枯れてしまったりする
鳥なのか猫か狸か、虫なのか微生物かは知らないが誰かが食う
人間が庭に植えたものを人間しか食べてはならぬと思っているのは
たぶん人間だけなんじゃないかと思う
植物がそのことを知ったらそんな愚かな人間をどう思うのだろう
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