ひとつ 約束/木立 悟
 





土のにおいの月がいくつか
夜から朝へと転がってゆく
鏡を造る鏡
暗い水と溝の道


星と星のあいだのむらさき
へだたりと境の腕
羽と羽のあいだに起ち
剣のように
飛沫のように海を割る


外の見えない
窓は薄紅
雪をつないで
冬は冬をわたりゆく


あますところなく灰になり
空は空の上をまたたかせている
約束はひとつ
午後であること


霧と空
言葉は
砕けては戻り
気づかれぬよう気づかれぬよう
左目に二度 指をのせる


白い馬がすぎ
髪に触れた
自分の髪に
白が来ぬように


冬はふりかえり
冬を
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