Days of Wine and Roses/渡 ひろこ
 
琥珀色のサウンドトラックが、
頭蓋骨の内側を濡らしていく
すっかり皺が減り、ツルンとした私の大脳皮質


鼓膜までねじこむイヤホンや
タイムラインを流れる電子文字で
刻まれたものが薄れ、腫れあがってしまった
指先は切れそうなページの手触りや
硬直したペンの握り方を忘れて戸惑っている


最初は赤茶けた髪一本の危機感のつもりが
いつの間にか束ねたシニヨンになって
もう肩にまで重く垂れ下がってきているようだ
そう、シナプスがつながらない
言葉が沈んでいく


『ノルウェイの森』では入り口で迷子になり
寺山修司の編んだ詩編がほどけず
ひとひらの名前さえも拾えない
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