who did not survived/mizunomadoka
ビルから落下して助からなかった者は、いない
海から、泳いで戻った者はいない
廃墟になった港町に
一人の男が住んでいた
私が住んでいた
男は私は塩の濃い土を耕して
野菜を育てた
雪の降る冬には
死んでしまうだろうと思えた
波と風の海鳴りが、すべての音だった
私の声をかき消した
男は海岸沿いを歩き
貝殻を集めていた
石で砕いては土に混ぜる
冬が近づいて
食べるものがなくなった
漁師小屋に火をつけた
この炎だけが、命だった
温度の差で
私よりも先に、雪が地面に触れた。
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