かばの休日/salco
かつて
という言葉は
アマゾンには存在しない
ナイルには存在するが
かつて
かばはサラリーマンであったが
さてかばは水中に棲まう
鼻の穴を閉じて 愚かな話だが
かばは魚にはなれなかった
とうとう、そしてこれからも
しかしかばは安息を必要としたのだ
あらゆる陸棲動物の中で
殆ど最も と言える程にだ
かばは日光浴をする
日光浴もせねばならない
温血動物であるが故に
安息の水中は彼の体を青くし
かと言って長々と陸に出ていれば
日射は彼を赤干しにしてしまう
干したり冷やしたり
冷やしたり干したり
かばはこうして毎日が休日だ
空腹の時以外は
しかし呼吸機能も体温調節機能も
一度として思い通りになった例がない
どうも上手く行かない、
と、かばは思うのだった
俺は、どうも中途半端で
自分でも時々自分がいやになる
やはり俺は相当に不幸だ
が、それでもまあ
そこそこ幸運な社会構成員ではあるな
と、かばは水中から目と鼻を出して
体じゅうを矢で飾った白犀をまじまじと
眺めて思う事だった
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