永遠に解けない雪 (改稿)/結城 森士
 

一人の少年が日陰を作っている
昼になればやがて降りそそぐ太陽の光が
すべて溶かしてしまうだろう
あの健気な少年の心さえ

あの健気な少年の心さえ
偶像崇拝に過ぎないのだから
悲しい顔を浮かべながら
存在しないはずの感情が語りかける
悲しみすら幻想に過ぎないことを
自我ですら記号に過ぎないことを

固体が液体に融解するという絶対的な現象の下に
溶け出した雪だるまが泣いている



夕刻に潤む落陽
薄汚れた雪の残骸
何かを手に入れようと手を伸ばしたが
何が欲しかったのか分からなくなってしまった
ただ、雪のように白く在りたい
決して汚れたかったわけではない
灰色の雪解け水になって
排水溝に流されてしまう
そしてもう何も残らない
けれどそれでいい
永遠なんてないのだから

けれどもし
言葉が永遠に残るのというのなら
あの冬の日
二人の心を溶かさないように
わたしは、口を閉ざしたのに
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