いそぐひと/恋月 ぴの
 
ここ数日来の寒波で凍てついた地下鉄の連絡通路に
場違いとも言えそうな親子連れの姿

乳母車を押し歩くお母さんの脇には小さなおんなの子
お母さんの手助けと押すのを手伝っているようにみえるけど
やっぱ乳母車にしがみついているだけなのかな

ついこないだまでは自分の指定席だったのに
快適な乳母車のなかは産まれて間もない弟に占拠されてるし

おねえちゃんなんだから

生きるって、望もうと望まざるとに関わらず
誰かに押しつけられた役柄を演じないといけないんだよね

お母さんの歩調に合わせて歩くのはしんどいし
見知らぬ場所でおいてけぼりは怖すぎる

昔だったら乳のみ子はねん
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