雪女になる/千月 話子
 

眠らせてしまえばいいことなのに
関節がギシギシと 
意のままの意思さえ凍らせて
動けないのです



長い髪から はらはら と
雪が零れる もう抗えない朝

隣で眠る愛する人の手を取って
最後の温もりを分け与えてもらうの

繋いだ掌に流れる血の色は 青
冷たい女に沸き立つ発熱を
奪われないように見せかけて
去って行った男の手は
本当に冷たくて あっけなくて
寂しいばかり


生温いお湯に浸かって
温かいミルクを飲んで
首まで寝床に入っても
心が凍るような雪山

白く冷たい世界から
私を救ってくれませんか



隣で眠る私の愛する人よ
キラキラ光る息に気がついて
震える この体を引き寄せて
”ぎゆ” と抱きしめてくれたなら
私は この冬ようやく
雪女にならずに済むのです


もう私 雪女にはなりたくないの、、、


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