ガスライト/……とある蛙
彼女から発せられる
ことば、旋律は
街中を彷徨う
歌声は力強く魂を揺さぶる
六〇年代ニューヨーク
カフェで行われた
ビート世代の詩の朗読会
擦り減った石畳の路地裏にあるガスライトカフェ
フォークソングの歌声と
押韻された詩が朗読された幸せな世代
マリアマルダーの歌声とともに
ギンズバーグもバロウズもケルアックも
ジャズと共に生きたが、
後から登場のディランがゾッコンの彼ら
今カフェで行われる朗読会には
ジャズクラブのような酒臭さは無いが
誇り高い青臭さはある
生暖かい目で見つめ合うだけ
朗読される言葉は
店内に溢れるが
街中にも漏れ出さない
力強さに欠け
魂は揺さぶられない
ただ暖かい空気を醸し出す
そこにいる者 皆
吐き出された言葉に酔い
同じに空気に漂う
文学ではない
それ以前の儀式だ
何も恐れることは無い。
すべてもう始まっているのだから。
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