貝が夢見る明日/ホロウ・シカエルボク
 
にどうしてもその瞬間が俺には見抜けない
壁が静かに穏やかにその色を変えてゆくのは外界の色が変わるせいなのか
実体は緩やかに変化するだけだが現実は本当はつかめることのないもやで
かろうじて指先に引っかかるものだけを迷いなくそう呼んでこれまでを生きてきた
真夜中の海の思念
豊かな種類の暗色を感ずることなく見ている
たとえば俺がその海底に住んで死ぬ貝であったとしたら
目にするのはきっとそんな色の連なりだろう
ずっとそのグラデーションを見つめながら海の欠片に還ってゆくのだろう
俺は死に絶えて堆積する貝殻のことを思う
彼らはきっと潮流にゆらゆら揺れてまるで死んでいるように見えないのだろう
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