人間ではないアイロン/真島正人
 
けるような
密度の中で
ふけを落としていた
彼女たち
だけが
時間という密度と
空間という密度に
ふるいをかけられ
ゆっくりと
ゆっくりと
抵抗と従属を
繰り返しているように見えた

人間ではないアイロンに
軒先のカラスが
教えてくれたことがあった
遠い街の夕暮れのこと、
果実のようなそのふくらみ
大規模な工場、
事故や、死のこと、
時間が
到達する、
残酷というもうひとつの果実。
「熟すという言葉があるんだ。それは膨らみ、汁を滴らせる。けれども変容は、『良くない』らしいよ」
アイロンは、
首をかしげた
自分には変容など
存在もしなかったからだ
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