紫色の夜/吉岡ペペロ
 
でとなりにいる。
<あたし、一年と半年くらい、オーストラリアいってこようかなあ>
こういうとき気の利いた言葉が出て来ない。
恋人の感情から生み出される声をすべて聴いてやることは、別れてしまうよりは苦痛ではなかった。いや、むしろそれでも楽しいくらいだった。
生姜のシャーベットを食べながら紫色のそとを見た。
ストックホルム、大連、ダニーデン、シアトル、イチョン、
なぜそんなことを探しているのだろう。
なつかしい夢をくりかえし見ているようだ。
恋人があまえてくるのを遠いこころで構いながら。






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