俺は夜明けを見て喜んだりしない/ホロウ・シカエルボク
 
女の涙と首吊りの男の体液と若者の薄い精液が三層の染みを作っていた
洗濯機に投げ込んで洗剤と柔軟剤と重層を入れて洗った
全自動という誇らしげな洗濯機
洗ってくれればどんな仕組みでも構わない
それがほんとに洗えているかどうかなんて
どうせ俺には確かめるすべなんかない
突然誰かが俺の両腕に手を添えて洗濯機に導き
こうやるんだと言いながら激しくグラインドさせた
洗濯機は妙な音を立てながらやけに明るい火花を出してショートし
俺は目が眩んでその場に立ちすくんだ
そしてチョマジデシャレニナンネエと
どこかで聞いた調子でボソボソとつぶやいた




俺は夜明けを見て喜んだりしない
だけどそんなやつらの気持ちだって少しぐらいは理解しているんだ





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