指きりげんまん、針、千本/とんぼ
 
針千本飲むくらいで許されるなら。


こたつに足を突っ込んでテレビを見ている恋人に
小指を差し出してみた
恋人はまるでテーブルの端から落ちるコップに手を伸ばしたような速さで
小指を強くからめてくれた
わたしは驚く
この人は約束の内容を聞く前からもう
守る覚悟を持てる人なのだ

約束はなに?
と恋人が聞く
わたしは小指を見つめながら言う
わたしのことずっと好きでいてね、っていう約束をして
恋人は微笑んでからめた小指に力を入れる

ちくりと胸に刺したまま残しておいた針を抜いて飲み込む
まずは1本、それから2本め
千本飲み終わるまでには、約束なんて溶けてしまうだろう
痛みはずっと遠くに去って
感傷だけが残るだろう
貝で描かれた細い線がたくさん残る引き潮の浜みたいに
優しかったこととか嬉しかったこととか
差し出された小指に感動したことなんかも

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