指きりげんまん、針、千本/とんぼ
むかし、(そう、わたしはもう「むかし」という言葉が使えるようになった)
大事な約束をひとつした
わたしは高校生だった
期末テストの英語の点数を
その頃付き合っていた人と競った
数点差でわたしが負けて
なんでもひとつお願いを聞くよと言った
思春期らしいえっちな要望をこっそり期待しながら
放課後の教室で微笑みをひとつ
彼は小指を差し出した
約束をちょうだい
俺のことずっと好きでいるっていう約束
うつむいた頬に夕焼けの赤が差す
わたしはいくつの指きりを忘れてきただろう
飲み損ねた針を数えて、その途方もなさに立ち尽くす
だけどこうも思う
わたしのついた嘘が、
針千
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