雪を待つ歌/あまね
ひえきった背骨から、ひとつひとつ
きわめてあいまいに
呼吸の輪郭をかたちづくっていく
雪が降るかもしれなかった
駅前広場で、
ぼくは行き先を忘れたふりをしていた
夕飯に何を食べようか決めていなかったので
まっすぐ帰りたくなかった
傘をいつでも置き忘れてきてしまう
職場に3本
友人宅に合計4本
モトカノ宅の合計2本は
もう捨てられてしまったと思う
ベランダで朽ちていった透明のビニール
空腹がきちきち、と痛んだ
下ばかりみて歩くから
よけいに痛むのだ
上を向いてみても月がなかったので
また下を見た
吸いがらに交じって
5円玉がひとつ落ちていた
拾わな
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