晩秋/花キリン
 
キーボードから感嘆を無造作に入力し、大きく開脚した秋の風景を置くと、液晶の片隅から夕暮れが生まれてくる。私は、サインペンのインクの残りを心配することもなく、孤独な開け暮れを栞にして文字列の間に差し込む。

夕暮れが夜の食卓に沈み込む前に、書き上げなければならないものがある。だから昨日書いた続きを栞の案内で畏まった白いテーブルに広げ、一日を目で追って急いで戻って来る。昨日からの続きはもう綻び始めているから繕う時間も必要だ。

打ち急いだものが咀嚼されてこぼれ落ちてくる。少しの誤字があっても、無表情な削除キーは隠されたままの方がいい。文字列が乱れていても、この季節の夜の食卓に相応しいから、長い話の間に修正することもできる。

後は、赤いポストに手渡しするタイミングだけだ。夕暮れが食卓の中に沈み込み、キーボードが沈黙を始めた頃合いを、どのようにして見極めるのか。ポストに投函すれば季節の衣替えが始まる。

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