お別れ/花キリン
青い空に白い雲が流れている。らせん状の階段を上ると手が届きそうだ。冬空に気持ちの切り換えが出来る優しい場所があるなんて。
少し歩くと、枯れた枝先の群れの中に、躓きながらも岬にでる道がある。崖の程よい高さがあって、水平線の先をぼんやりと考えながら、一人で泣く場所としては相応しいのかも知れない。
潮の満ち引きが、高ぶるものを杖のように両の手で支えてくれるから、ここにいると体が空中を舞う身軽さを感じる。この場所を伏せたとしても、何人かの行き交う足音は残されているから、私一人のものではないのだろう。同じように泣いて同じように飛び立ちたい、そう思ったことだろう。
この道を私が知ったのは偶然なのだ。涙が枯れて途切れた辺りに、この思いの沈みを埋葬しようとして、枯れた枝先に隠れるように身を伏せていたのを発見した。
この場所から手が届く高さはどの辺りなのか。せめてお別れの心だけでも、その高さまで運んで行きたいのだが。
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