アパート/番田
い
時代は息を留める事などできないのだ
*
回りくどい思いで いつも そこで 聴いた
ステレオのダイヤルを 手で 回し
最後の リクエストを 私は 入力した
突然流れはじめた 外の世界
濁った色に溶けていく新宿のネオンサイン
タクシードライバーに 料金を 支払う
ねずみ色のスーツを着た 暗がりの中
何も思うことも 今日もなくした
そして私はいったい誰なのかとたずねていた
握りしめる この 手の中に
持ち寄った 思いは もうすでに 無くならされた
破れかぶれの計算で 私は飛び出した
遠い日の体が ひとつ そこに 蘇る
これはゲームの中のできごとではない
RGBの 電光看板が 郷愁をそそる
誰の手も そこで 触れ合うことはない
街の中で 思いを 私はひとり 叫んでいた
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