0/はるな
じていた。母が持っていた、わたし用にあたたかい麦茶のはいった水筒と母とメイロさん用の缶コーヒーとお財布を入れた小さなトートバッグを、メイロさんが「持とうか」というのを、「いいの」と、柔らかく断る声が聞こえたりした。
公園の入り口が見えたとき、ふだんはめったにそんなことをしないベイビーが急にはしりだして、わたしは転んだ。たぶんほかの犬の匂いに興奮したのだろう。ベイビーはもともとしっかりした大型犬だし、わたしもやせっぽちだったから、少し引きずられてしまった。でもマーブルもようのゴムみたいな質感の紐が、わたしの手首にしっかりと巻きついていたせいで、ベイビーはすぐに立ち止まった。
「直子!」と母が叫
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