0/はるな
 

(ベイビー、ベイビー、こっちへおいで)。
 柔らかい茶色をなでれば、いつだって安心して息ができた。

 ベイビーはあかるい毛色の頭のいい大型犬で、メイロさんがどこかからもらってきた。もう子いぬとよべないくらいに大きくそだっていたベイビー。
「ベイビーだ」
 メイロさんはうれしそうに言って、母とわたしにベイビーを紹介した。
「小さくないわ」
 と母は言い、それから、
「でも賢そう」
 と言って笑った。母はうれしかったのだ。
 わたしはそのとき八歳で、枯れ木のような腕と脚をもっていた。犬は好きでも嫌いでもなかったけれど、ベイビーはいやなにおいがしなかったし、大人しかったから好き
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