dissimilation./吉田ぐんじょう
・
夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
かなしい
・
眠る夫の口から
糸がはみ出ていた
引っ張るとそれにくっついて
汚いどろどろしたものがどんどん出てくる
もう何も出てこなくなるまで
三十分ほど引っ張っただろうか
洗面器いっぱいに取れたどろどろは
死にたてみたいに温かだった
庭の隅に埋葬した
翌朝
起きてきた夫は
つやつやとよい顔色で
愚痴も言わずにきびきび動く
清らかなひとになっていた
青ざめるほどに
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