海亀2題/salco
ルーの海の中で
呑気に呑気に暮らし ―――
それよりも、
私の目はきれいだった事だろう
悲し気な
その目には罪業の翳ひとつ無く
もしも海ガメだったなら
蒼い蒼い、水と夜の間で首をもたげ
月の裏側に光を仰いで、
幾分かは幸せなのだ
そうして何も知らずに暮らせるだろう
何に胸を焦がすでもなく
何に手を汚す事も無く
空虚と焦燥に身を持て余すでもなく
血を流す事も無く
―― 死ぬ時だって苦しみはしない
あれから何千年の時が経ったろう
自分がまだ二十三年しか生きていないなんて
とても信じ難いのだ
こうして何千年も微動だにせず
遥かな水平線を見て暮らしているというの
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