海亀2題/salco
 
Before

 私

もし私が海ガメだったら今頃は
月の裏側で首をもたげて、
―― 海へ帰る時刻だ
ぶざまなヒレは砂を漕いで、砂を漕いで
すると波頭が白くぼんやり輝きながら
私の名を呼ぶけれど、私は
気づかないかも知れない
涙と共に卵を産みに来て
却って陸へ陸へと行ってしまうのかも
そうして私の骨が干乾びて
甲羅に千の亀裂が割れて
虫一匹その亡骸を顧みなくなった頃
被せた砂の中からいつか
小さな何十匹もの子供達が
遠い海を目指して
暗い浜を突進して行くかも知れない
砂を漕いで、砂を漕いで


もしも私が海ガメだったら今頃は
プルシャン・ブルー
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