音のない洞窟/吉岡ペペロ
 

シンゴはヨシミの胸に手をやった

それはいまこうあるべきだというのとは違うような気がした

ヨシミの髪を見つめた

シンゴはヨシミの髪を撫でていた

部屋はあざやかなままだった

男の歌うファドがながれている

洞窟のそとなんて、しょせんこんなもんだよ、

シンゴはこえにはださずつぶやいて

ヨシミがくずれるまでヨシミをてのひらでさわっていった

オレは洞窟からでたのだろうか

いや、それならこの突風に気配を感じるはずだ

オレは洞窟の出口のすぐそばまで来ていて、そとの光を見ているだけなような気がした

服越しに乳首をつねる

ヨシミは痛みのこえをあげて息とともにシンゴにくずれた

シンゴのてのひらだけがやさしくなっていた






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