点描癖/岡部淳太郎
 
その寒さの中で人々が口々に

  ――おめでとう、、、
  ――おめでとう、、、

と言い合う声が
聞こえてくる
そういえば年が明けたのだったなと思って
その声を自らへの皮肉のように抱えこみ
もう一度私は
新しい病へと入っていく
こうして区切るたびに
背後を置き去りにして
純真なふりをしてきた
そしてそのたびに受けた罰に
身に覚えがないかのようにふるまっては
滲んでくる水の冷たさに
手を赤く染めてきたのだ

  ――おめでとう、、、
  ――おめでとう、、、

懲りない出発を祝って
喪失の声が響く
それが私であり
それが人であったのだ、



(二〇一一年一月)
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